テーマ:試乗運転の流儀 ~「カタログ」ではなく「走り」を確かめる~

前回のA-6-aで「設計図(デザイン)」が正しいことを確認しました。

セクションA-6-bは、コントロールの整備状況(Design)が適切であると確認された後、それが定められた期間を通じて、継続的に正しく機能していたか(Operating Effectiveness)を検証するための具体的な手続を識別するプロセスです。

試験では、「どの手続が最も証拠力が高いか?」という証拠の信頼性の順位付けや、「質問(インタビュー)だけで終わらせてはいけない」という鉄則が頻出です。


1. 導入:整備(Design)と運用(Operation)の違い

前セクションの復習ですが、この違いは決定的です。

  • 整備状況(A-6-a): 「マニュアルに『承認する』と書いてあるか?」(静的評価)
  • 運用状況(A-6-b): 「過去1年間、課長はサボらずに毎回承認印を押していたか?」(動的評価)

どんなに立派な信号機(整備)があっても、電気が止まっていたり、ドライバーが無視していたりすれば(運用)、事故は防げません。本セクションは、この「実態」を暴くための技術論です。

2. 検証手続の「証拠力ヒエラルキー」

コントロールをテストする方法はいくつかありますが、証拠としての強さ(信頼性)が異なります。試験では、この序列を理解しているかが問われます。

順位手続名内容特徴・弱点
最強再実施(Reperformance)監査人が、担当者と同じ手順を自分でやってみる。最も信頼性が高い(例:監査人が自分で計算し直し、システムの結果と一致するか確かめる。)
検査 / 文書閲覧(Inspection)記録、伝票、証憑を物理的・電子的に確認する。標準的な手法
(例:請求書に承認印があるか目で見て確認する。)
観察 (Observation)担当者が作業している様子を横で見る。「その瞬間」しか保証しない
(弱点:見られている時だけちゃんとする可能性がある=ホーソン効果。)
質問 (Inquiry)担当者に「やってますか?」と聞く。単独では証拠として不十分
(弱点:嘘をつかれる、勘違いの可能性がある。)

★試験のポイント: 「質問(Inquiry)」は重要ですが、それ単独でコントロールの有効性を結論付けてはいけません。 必ず「検査」や「観察」と組み合わせて裏付け(裏付け証拠:Corroborating Evidence)を取る必要があります。

3. テストの範囲(Extent)と時期(Timing)

「どの手続(Nature)」を使うか決めたら、次は「どれくらい」「いつ」やるかを決めます。

① 範囲(サンプリング)

運用状況のテストでは、通常「サンプリング」を行います。

  • 全数調査はコストがかかりすぎるため、例えば「年間1万件の取引から40件を抽出」してテストします。
  • ここでのミスが許容範囲内であれば、「全体としても有効である」と統計的に推測します。
② 時期(期間)

運用状況テストは「期間(Period of time)」に対する保証です。

  • × ダメな例: 期末日(12月31日)の取引だけチェックする。
  • ○ 良い例: 1月から12月までまんべんなくサンプルを抽出してチェックする。

4. コントロールテストと実証性テストの関係

ここもCIA試験の重要概念です。

  1. コントロールのテスト(Tests of Controls): 「プロセス(防御壁)」が機能しているかを見る。
    • 例:承認印があるか確認する。
  2. 実証性テスト(Substantive Testing): 「結果(数字)」が合っているかを見る。
    • 例:在庫の金額を数え直す。

★ポイント: コントロールテストの結果が「有効(Good)」であれば、信頼できるので、実証性テストの量を減らすことができます(効率的)。 逆に、コントロールが「無効(Bad)」なら、数字が間違っているリスクが高いので、実証性テストを増やす(または全数調査する)必要があります。

まとめ

セクションA-6-bのポイントは、「自分の目と手で確かめろ」です。

  • 「やってます」という言葉(質問)を信じるな。
  • 「やっているふり」(観察)に騙されるな。
  • 「やった痕跡」(検査)や「自分でやってみる」(再実施)こそが、プロの監査人が依拠すべき証拠です。

【練習問題】パート2 セクションA-6-b

Q1. 内部監査人は、販売部門における「売上値引きの承認コントロール」の有効性を検証しようとしている。次の監査手続のうち、コントロールが有効に機能していることを裏付ける証拠として、最も信頼性が高い(証明力が強い)ものはどれか。

A. 販売部長にインタビューを行い、部下が申請した値引きをどのような基準で承認しているか、その方針と手順について説明を求める(質問)。

B. 値引き承認のプロセスが記載された社内規定(マニュアル)とフローチャートを閲覧し、承認権限者が明確に定義されているかを確認する(文書レビュー)。

C. 監査期間中の売上取引データからサンプルを抽出し、適用された値引き率がシステム上のマスターデータと一致するか、および規定通りに承認されているかを監査人自らが計算・照合する(再実施)。

D. 監査人が販売部門のオフィスに滞在し、販売担当者が値引き申請を行い、部長がそれを承認する様子を一日中見て回る(観察)。

【解答・解説】

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正解(C): 「再実施(Reperformance)」は、監査人自身が独立して手順を実行し、結果を検証するため、最も信頼性の高い証拠を提供します。システム計算の正確性や承認ルールの適用を自ら検証することで、間違いのない確証が得られます。

不正解(A): 「質問」は最も証拠力が低く、裏付けが必要です。

不正解(B): これは「整備状況(Design)」の確認には有効ですが、「運用状況(実際に承認されているか)」の証拠にはなりません。

不正解(D): 「観察」は、監査人が見ている間だけ正しく振る舞う可能性がある(ホーソン効果)ため、継続的な運用の証拠としては再実施や検査に劣ります。


Q2. 内部監査人は、工場の「安全管理手順」が遵守されているかをテストするために「観察(Observation)」の手続を採用した。監査人はヘルメットを着用して工場内を巡回し、作業員が安全ルールを守っていることを確認した。この「観察」手続の限界(弱点)に関する記述として、最も適切なものはどれか。

A. 観察は、物理的な証拠を残すことができないため、監査調書に記録することが禁止されている。

B. 観察は、監査人が見ている「その特定の時点」における状況しか証明できず、見ていない時も同様にルールが守られている保証はない。

C. 観察は、文書化された手順(マニュアル)が存在しない場合には実施することができない。

D. 観察は、最もコストがかかる手続であるため、予算が潤沢な場合にしか選択できない。

【解答・解説】

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正解(B): 観察の最大の限界は「一時点(Point in time)」の証拠にしかならないことです。また、被監査者が監査人の存在に気づいて行動を変える(普段はやらないのに、監査人がいる時だけヘルメットを被るなど)可能性があります。

不正解(A): 観察結果はメモや写真などで文書化・記録可能です。

不正解(C): マニュアルがなくても、実際の行動を観察することは可能です。

不正解(D): 一般に再実施などに比べてコストは低い傾向にあります。


Q3. 内部監査人は、経費精算プロセスのコントロール有効性テスト(Tests of Controls)を実施した結果、承認漏れのエラー率が予想以上に高く、コントロールが「無効」であると結論付けた。この結論がその後の監査計画(実証性テスト)に与える影響として、最も適切なものはどれか。

A. コントロールが無効であるため、監査人はこれ以上テストを行っても無駄であると判断し、実証性テストを全てキャンセルして監査を終了する。

B. コントロールが無効であるため、財務数値の誤りが含まれているリスク(残余リスク)が高いと判断し、実証性テストの範囲を拡大(サンプル数を増やすなど)する。

C. コントロールが無効であるため、経営陣に代わって監査人が全ての経費精算書に承認印を押すことで、不備を修正する。

D. コントロールテストの結果と実証性テストの計画は無関係であるため、当初の計画通りに変更せず進める。

【解答・解説】

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正解(B): コントロールテストと実証性テストは「シーソー」の関係です。コントロールが弱い(信頼できない)場合、数字が間違っている可能性が高まるため、監査人は詳細な実証性テスト(金額の確認など)の量を増やして、直接的な証拠を集める必要があります。

不正解(A): コントロールがダメなら、結果(実証性テスト)で真実を確かめる必要があります。監査を放棄してはいけません。

不正解(C): 監査人が業務代行(承認)を行うことは独立性の侵害です。

不正解(D): 監査計画はリスク評価の結果(コントロールテストの結果含む)に応じて柔軟に修正されるべきです。