【CIA試験講義】パート1 セクションB-4-g: 好奇心の適用と継続的学習
テーマ:未知への渇望 ~プロフェッショナルは進化を止めない~
内部監査人は、組織の中で最も「好奇心(Curiosity)」を持っていなければならない職業です。 なぜなら、リスクは常に変化し、新しいテクノロジーやビジネスモデルが次々と生まれているからです。昨日までの知識で今日の監査を行えば、明日のリスクを見逃すことになります。
GIAS(グローバル内部監査基準)は、内部監査人が現状に満足することなく、「新しい情報を発見し、知識をアップデートし続ける姿勢」を持つことを求めています。
このセクションでは、好奇心がどのように監査品質を高め、キャリアの成長につながるかを学びます。
1. 「専門職としての好奇心(Professional Curiosity)」とは
単なる野次馬根性ではありません。監査業務に関連する新しいトレンド、技術、規制の変化に対して、「これは組織にどう影響するか?」という問いを持ち続けることです。
- 受動的学習: 研修を受けさせられるから学ぶ。
- 能動的学習(好奇心): AIのリスクが気になったので、自らウェビナーに参加し、専門書を読む。
GIASは後者を求めています。
2. 継続的専門能力開発(CPE)の義務
好奇心を具体的な行動に移すための制度が、CPE(Continuing Professional Education)です。 CIA(公認内部監査人)資格を維持するためには、毎年一定時間の学習(CPE単位の取得)が義務付けられています。
- 目的: 専門能力(Proficiency)を維持・向上させるため。
- 対象: 会計知識だけでなく、IT、データ分析、ESG、ソフトスキルなど幅広い分野。
3. 好奇心がもたらす監査へのメリット
好奇心旺盛な監査人は、以下の点で組織に貢献します。
- 新興リスク(Emerging Risks)の早期発見:
- ニュースで見たサイバー攻撃の手口を、自社のシステムに当てはめて検証する。
- 革新的な監査手法の導入:
- 「もっと効率的な方法はないか?」と考え、データ分析ツール(DA)やAI監査を試みる。
- 深い洞察(Insight)の提供:
- 表面的な事象だけでなく、その背景にある業界動向やマクロ経済の影響まで考慮した助言ができる。
4. 好奇心を妨げる要因とその克服
- 阻害要因: 多忙、現状維持バイアス、「監査はチェックリスト通りやればいい」という思い込み。
- 克服法:
- 情報のアンテナを張る: 業界ニュース、IIAのガイダンス、競合他社の動向をチェックする習慣をつける。
- 「なぜ?」を繰り返す: 既存のプロセスに対して、常に疑問を持つ。
- 異分野との交流: 監査以外の部門や、社外の専門家とネットワークを作る。
まとめ
セクションB-4-gのポイントは、「Stay Hungry, Stay Foolish」です。
- 監査人にとって最大の敵は「慢心」です。「自分はもう十分知っている」と思った瞬間に、成長は止まり、リスクへの感度が鈍ります。
- 常に新しいことを学び、変化を楽しめる好奇心こそが、AI時代にも生き残る監査人の必須スキルです。
【練習問題】パート1 セクションB-4-g
Q1. 内部監査部門長(CAE)は、監査スタッフに対して「専門職としての好奇心(Professional Curiosity)」を発揮することを奨励している。この行動規範を具体的に実践している例として、最も適切なものはどれか。
A. 監査手続きに記載された項目のみを機械的にチェックし、それ以外の事項には関心を持たない。
B. 最近ニュースで話題になっている生成AI(人工知能)のリスクについて、自発的に調査を行い、自社の業務にどのような影響があるかを検討してチーム内で共有する。
C. 監査対象部門の担当者の個人的な噂話やプライバシーに関する情報を積極的に収集する。
D. 過去10年間変わっていない監査プログラムを、「伝統を守るため」としてそのまま使い続ける。
【解答・解説】
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正解(B): 専門職としての好奇心とは、変化する環境や新しい技術・リスクに対して関心を持ち、それを組織のリスク管理にどう適用できるかを能動的に学ぶ姿勢です。生成AIのような新興技術への自発的な調査は、まさにこの姿勢を体現しています。
不正解(A)、(D): 現状維持やマニュアル依存は好奇心の欠如を示しており、変化するリスクに対応できません。
不正解(C): 業務に関係のないプライバシーの詮索は、好奇心ではなく倫理違反(ハラスメントやプライバシー侵害)です。
Q2. CIA(公認内部監査人)が資格を維持するために、継続的専門能力開発(CPE)を行うことが義務付けられている主な理由は何か。
A. 資格認定団体(IIA)の収益を確保するため。
B. 監査人が昇進や昇給をするための要件を満たすため。
C. ビジネス環境、リスク、および監査手法は常に進化しており、監査人が最新の知識とスキルを維持・向上させ、質の高いサービスを提供し続けるため。
D. 監査人が忙しくしているように見せることで、リストラを防ぐため。
【解答・解説】
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正解(C): 内部監査は静的な職業ではありません。CPEの目的は、変化の激しいビジネス環境において、監査人が常に専門職としての適格性(Proficiency)を保ち、ステークホルダーに価値を提供し続けられるようにすることです。
不正解(A)、(B)、(D): これらは副次的な影響や誤った認識であり、CPE制度の本質的な目的(品質の維持・向上)ではありません。
Q3. 内部監査人が、担当する業界の最新トレンドや規制動向について学ぶために、業界カンファレンスに参加した。この活動が内部監査業務にもたらすメリットとして、最も直接的なものはどれか。
A. 監査人の出張マイルが貯まる。
B. 監査対象部門の業務内容や直面している課題(新興リスク)をより深く理解できるようになり、表面的なチェックだけでなく、ビジネスに貢献する洞察(インサイト)を提供できるようになる。
C. 監査の時間が増えるため、詳細なテストが可能になる。
D. 競合他社に転職するためのコネクションを作ることができる。
【解答・解説】
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正解(B): 業界知識(ビジネス・アキュメン)を深めることで、監査人は「何が重要なリスクか」をより的確に識別できるようになります。これにより、形式的なコンプライアンス確認を超えて、経営陣が真に必要とする戦略的な助言や洞察を提供することが可能になります。
不正解(A)、(D): 個人的なメリットであり、監査業務の品質向上とは無関係です。
不正解(C): 知識が増えることで効率的な監査が可能になり、時間はむしろ短縮される可能性があります。
