テーマ:「正しいことを」しているか? 「正しく」行っているか? ~3つのEと品質の追求~

内部監査といえば「不正の発見」や「ルールの遵守確認」をイメージしがちですが、現代の内部監査(特にGIASが目指す姿)において、最も付加価値が高いとされるのが、このセクションで学ぶ「パフォーマンス監査(業務監査)」と「品質監査」です。

これらは、単に「間違いがないか」を見るだけでなく、「組織がもっと良くなる(儲かる、無駄が減る、顧客が喜ぶ)ためにはどうすればよいか」を評価する、極めて建設的なアシュアランス業務です。


1. パフォーマンス監査(Performance Audit / Operational Audit)

一般的に「業務監査」とも呼ばれます。組織の業務プロセスを評価し、改善点を見つけるための監査です。 この監査の判定基準となるのが、有名な「3つのE」です。

① 有効性(Effectiveness)=「正しいことをしているか?」

  • 定義: 組織の目標が達成された度合い。
  • 視点: 結果(Outcome)に着目します。
  • 例: 「営業部門は、今期の売上目標を達成できたか?」
    • どんなに安く作っても、売れなければ有効性はゼロです。

② 効率性(Efficiency)=「正しく行っているか?」

  • 定義: 投入(Input)に対する産出(Output)の割合。
  • 視点: プロセス(Process)の無駄のなさに着目します。
  • 例: 「同じ売上を作るのに、残業時間を半分に減らせないか?」「無駄な会議はないか?」

③ 経済性(Economy)=「安く調達できているか?」

  • 定義: 適切な品質の資源を、最低限のコストで入手すること。
  • 視点: コスト(Cost)に着目します。
  • 例: 「同じ性能のPCを、もっと安いベンダーから買えないか?」

覚え方:

有効性:ゴールに入ったか?(Goal)

効率性:ガソリンを無駄にしなかったか?(Process)

経済性:ガソリンを安く入れたか?(Cost)

2. 品質の監査(Quality Audit)

「品質」とは、製品やサービスの特性が、顧客の要求や設定された基準を満たしている度合いのことです。 品質監査では、組織のプロセスが定義された品質基準(例:ISO 9001、社内品質マニュアル)に準拠しているかを評価します。

主な目的

  1. 不適合の特定: 製品の欠陥や、サービス提供プロセスのミスを発見する。
  2. 根本原因の究明: なぜ不良品が出たのか?(機械の故障か、人の訓練不足か?)
  3. 継続的改善: TQM(総合的品質管理)などのフレームワークに基づき、品質向上サイクルが回っているかを確認する。

パフォーマンス監査との違い

  • パフォーマンス監査: 「儲かるか? 目標達成できるか?」というビジネス視点が強い。
  • 品質監査: 「仕様通りか? 顧客満足を満たすか?」というスペック・コンプライアンス視点が強い。

3. KPI(重要業績評価指標)の活用

パフォーマンス監査や品質監査を行う際、監査人は「何をもって良い・悪いと判断するか」というモノサシが必要です。 そこで、経営陣が設定したKPI(Key Performance Indicators)が適切かどうかを評価し、それを監査基準として利用します。

監査人の役割:

  1. そもそもKPIが設定されているか?
  2. そのKPIは目標達成を測るのに適切か?(誤ったKPIは誤った行動を招く)
  3. KPIのデータは正確か?

4. GIASにおける重要性(価値の創造)

GIASの目的である「価値の創造(Create Value)」に最も直結するのが、この分野です。 財務諸表が正確でも、会社が非効率で赤字なら意味がありません。 監査人が「この工程を自動化すればコストが20%下がります」といった助言(アシュアランスの結果としての提言)を行うことで、組織の価値を高めることができます。

まとめ

セクションA-5-dのポイントは、「数字(財務)や法律(コンプライアンス)以外の世界」です。

  • 3つのE(有効性、効率性、経済性)を暗記してください。
  • 特に「効率的だが有効ではない(速く走ったが、行き先が間違っていた)」ケースや、「有効だが経済的ではない(目標達成したが、金使いすぎ)」ケースを識別できるかが試験の肝です。

【練習問題】パート1 セクションA-5-d

Q1. 内部監査人が製造部門のパフォーマンス監査を実施している。監査人は「工場の生産ラインは24時間稼働しており、単位時間あたりの生産個数は過去最高を記録したが、製造された製品の多くが市場のニーズに合わず、大量の在庫廃棄ロスが発生している」ことを発見した。この状況を「3つのE」の観点から評価した記述として、最も適切なものはどれか。

A. 効率性(Efficiency)は高いが、有効性(Effectiveness)が低い。

B. 有効性(Effectiveness)は高いが、効率性(Efficiency)が低い。

C. 経済性(Economy)は高いが、効率性(Efficiency)が低い。

D. 有効性(Effectiveness)も効率性(Efficiency)も共に高い。

【解答・解説】

正解と解説を表示

正解(A): 「単位時間あたりの生産個数が多い」ことは、投入資源(時間・機械)に対して多くの産出を生んでいるため、プロセスとしては「効率的」です。しかし、「市場ニーズに合わず廃棄されている(売れていない)」ことは、組織の目標(利益・シェア獲得)を達成できていないため、「有効性」が低い状態です。

不正解(B): 逆です。目標未達なので有効性は低いです。

不正解(C): 経済性(調達コスト)については情報がありません。

不正解(D): 有効性が低いため誤りです。


Q2. 内部監査人が「品質監査(Quality Audit)」を実施する主な目的として、最も適切なものはどれか。

A. 組織の財務諸表が一般に公正妥当と認められる会計基準(GAAP)に準拠して作成されていることを表明するため。

B. 業務プロセスが、顧客の要求事項、規制要件、および組織が定めた品質基準(例:ISO 9001)に適合していることを確認し、プロセスの継続的改善を支援するため。

C. 組織の資金調達コストを最小限に抑えるための財務戦略を立案するため。

D. 従業員の不正行為を発見し、個人の責任を追及するため。

【解答・解説】

正解と解説を表示

正解(B): 品質監査の焦点は、製品やサービスが定義された基準(仕様、顧客ニーズ、国際規格など)を満たしているか、および品質管理プロセスが有効に機能しているかを確認することにあります。

不正解(A): これは「財務監査」の目的です。

不正解(C): これは財務部門の役割、あるいは「経済性」に関連する監査ですが、品質監査の直接の目的ではありません。

不正解(D): これは「不正調査」の目的です。


Q3. 内部監査部門が実施する「パフォーマンス監査(業務監査)」において、監査人が評価対象とすべき項目の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。

A. 預金残高の正確性と、現金の物理的な保管状況。

B. 組織の戦略目標の達成度(有効性)、業務プロセスの無駄の有無(効率性)、および資源調達コストの妥当性(経済性)。

C. 情報システムのアクセスログと、パスワードの複雑性要件。

D. 法令違反の件数と、顧問弁護士への相談記録。

【解答・解説】

正解と解説を表示

正解(B): パフォーマンス監査の核心は「3つのE(有効性・効率性・経済性)」の評価です。これにより、組織が目標に向かって最適に運営されているかをアシュアランスします。

不正解(A): これは「財務監査」の典型的な手続きです。

不正解(C): これは「ITセキュリティ監査」の対象です。

不正解(D): これは「コンプライアンス監査」の対象です。