テーマ:2つの「自己点検」 ~日常のチェックと年に一度の大掃除~

セクションC-1-gは、QAIP(品質のアシュアランスと改善のプログラム)を構成する「内部評価」の2大要素、すなわち「継続的モニタリング(Ongoing Monitoring)」と「定期的自己評価(Periodic Self-assessment)」について、それぞれの具体的な実施内容と違いを深く理解するセクションです。

試験では、ある活動(例:調書のレビュー)が「どちらの要素」に該当するかを正しく識別できるかどうかが問われます。


1. 導入:内部評価の「2階建て」構造

内部監査部門が自分たちで品質を管理する「内部評価」は、時間軸の異なる2つの活動で構成されています。

  1. 継続的モニタリング: 日常業務の中に組み込まれ、リアルタイムで行われるもの。
  2. 定期的自己評価: 特定のタイミング(年1回など)で、業務全体を振り返るもの。

この2つを組み合わせることで、「日々の小さなズレ」と「全体的な大きなズレ」の両方を修正します。

2. 継続的モニタリング(Ongoing Monitoring)の主要要素

これは、監査業務が進行している最中に、「今まさに」行われているチェックです。特別なプロジェクトではなく、ルーチンワークの一部です。

主要な要素具体的な活動例
業務の監督(Supervision)上司(CAEやマネジャー)が部下の作業を指導し、進捗を確認すること。
調書のレビュー監査証拠が十分か、結論が正しいかを確認するための、監査終了前のチェック。
指標(Metrics/KPI)の測定予算対実績、スケジュールの遵守率、監査完了までの日数などをモニタリングする。
チェックリストの使用「計画策定時にリスク評価を行ったか?」「開始会議は実施したか?」などを確認する標準的なリスト。
顧客アンケート個別の監査終了直後に、被監査部門からフィードバックを得る。

★ポイント: 継続的モニタリングは、問題が起きたら「その場ですぐに」修正できるのが強みです。

3. 定期的自己評価(Periodic Self-assessment)の主要要素

これは、日常業務から一歩離れて、「包括的に(Holistically)」部門全体を見直す活動です。通常は、経験豊富な内部監査人が実施します。

主要な要素具体的な活動例
基準適合性の検証GIAS(基準)および倫理綱領の全項目について、適合しているかをチェックリストで総点検する。
完了ファイルの事後レビュー過去1年間に完了した監査ファイルから数件をサンプリングし、品質基準を満たしていたか検証する。
ステークホルダー調査取締役会や上級経営陣に対し、年1回の詳細なアンケートやインタビューを行い、期待とのギャップを確認する。
リスク評価プロセスの見直し監査ユニバースのリスク評価手法が、現在のビジネス環境に合っているか再検討する。
ベンチマーキング他社の内部監査部門(ベストプラクティス)と自社を比較する。

★ポイント: 定期的自己評価は、日常のモニタリングでは見落としてしまう「構造的な問題」「基準への全体的な不適合」を発見するのに役立ちます。

4. 試験で狙われる「ひっかけ」ポイント

  1. ×「継続的モニタリングは、毎朝行われる朝礼のことである」
    • 解説: 朝礼もコミュニケーションの一部ですが、QAIPで言うモニタリングとは、もっと実質的な「監督(Supervision)」や「レビュー」を指します。
  2. ×「定期的自己評価は、5年に1回行えば十分である」
    • 解説: 5年に1回は「外部評価」です。定期的自己評価は、通常「年1回」程度が推奨されます。外部評価のない年に品質を担保するためです。
  3. ×「監査終了後に被監査部門に送るアンケートは、定期的自己評価の一部である」
    • 解説: 個別の監査直後に行うアンケートは、通常「継続的モニタリング」の一部とみなされます。一方、年に一度まとめて経営陣に行うアンケートは「定期的自己評価」に含まれます。

まとめ

セクションC-1-gのポイントは、「木を見る(継続的)か、森を見る(定期的)か」です。

  • Ongoing (Routine): 調書レビュー、監督、個別アンケート。
  • Periodic (Event): 基準適合チェック、事後サンプリング、経営陣サーベイ。

CAEは、この両輪を回すことで、外部評価(車検)を待たずに自律的に品質を維持する仕組みを作らなければなりません。


【練習問題】パート3 セクションC-1-g

Q1. 品質のアシュアランスと改善のプログラム(QAIP)において、「継続的モニタリング(Ongoing Monitoring)」に該当する活動として、最も適切なものはどれか。

A. 内部監査部門長(CAE)が、完了した監査業務のファイルから無作為に抽出したサンプルを対象に、年に一度の詳細な品質レビューを行う。

B. 監査業務の各段階において、監査マネジャーがスタッフの作成した作業調書をレビューし、承認のサインを行う。

C. 外部のコンサルタントを招聘し、内部監査部門のガバナンス体制について評価を受ける。

D. 同業他社の内部監査部門と、監査手法やKPIに関するベンチマーク調査を実施する。

【解答・解説】

正解と解説を表示

正解(B): 継続的モニタリングとは、日々の監査業務プロセスに組み込まれたルーチン活動のことです。上司による調書のレビュー(Supervision)は、その最も代表的かつ重要な要素です。

不正解(A): これは「定期的自己評価」に該当します(事後的なサンプリング)。

不正解(C): これは「外部評価」に該当します。

不正解(D): ベンチマークは通常「定期的自己評価」の一部として行われます。


Q2. 「定期的自己評価(Periodic Self-assessment)」を実施する主な目的と特徴に関する記述として、正しいものはどれか。

A. 日々の業務の中で発生した些細なミスを即座に修正することを主目的とし、すべての監査人が毎日実施する。

B. 外部評価の代替として実施されるものであり、定期的自己評価を行っていれば、5年に1回の外部評価は免除される。

C. 継続的モニタリングでは捉えきれない包括的な視点から、基準への適合性やステークホルダーの期待との整合性を、年に1回などの頻度で評価する。

D. 監査対象部門(被監査部門)が、自らの業務プロセスを評価するために実施するコントロール・セルフ・アセスメント(CSA)のことである。

【解答・解説】

正解と解説を表示

正解(C): 定期的自己評価は、日常業務から離れて、より広い視点(全体的な基準適合性や有効性)で部門の活動を評価するものです。継続的モニタリングを補完する役割があります。

不正解(A): これは「継続的モニタリング」の特徴です。

不正解(B): 外部評価は免除されません。

不正解(D): QAIPにおける自己評価は「内部監査部門自身」の評価であり、被監査部門が行うCSAとは異なります。


Q3. 次の活動のうち、内部監査部門長(CAE)が「定期的自己評価」の一環として実施すべき活動の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。

  1. グローバル内部監査基準(GIAS)および倫理綱領への適合性を確認するための包括的なチェックリストの実施。
  2. 個々の監査業務終了直後に、被監査部門に対して送付する満足度アンケートの実施。
  3. 完了した監査案件の中から選択したサンプルに対する、独立した内部監査人による事後レビュー。
  4. 監査予算と実績時間の差異分析(週次または月次)。

A. 1と3 B. 2と4 C. 1と2 D. 3と4

【解答・解説】

正解と解説を表示

正解(A): 「1. 基準適合チェックリスト」と「3. 事後サンプリング・レビュー」は、定期的(例:年次)に行われる包括的な評価活動であり、定期的自己評価の典型例です。

不正解(B, C, D): 「2. 終了直後のアンケート」と「4. 予算実績分析(月次)」は、日常の業務プロセスに組み込まれた「継続的モニタリング」に分類されます。